Quinceによる2号機原子炉立屋内調査の映像

福島第一原子力発電所2号機原子炉立屋の中を調査するQuince(千葉工業大学、国際レスキューシステム研究機構)の7月8日の映像が東京電力の「報道配布 写真・動画ダウンロード」サイト (http://www.tepco.co.jp/tepconews/pressroom/110311/index-j.html) に2011年7月17日付けで公開された。左からQuince の上方から自身を見る映像(Overhead)、後方カメラの映像、前方カメラの映像。いずれも広角レンズで捉えたもの。上部中央左寄りに見えるのは線量計の数字を見るカメラの映像だろうか。(動画ファイル18.1MB)

TEPCO 2011.7.17 press release

同じサイトに6月20日付けで公開された6月16日のQuinceの映像(テストの様子だろうか)と合わせて見れば状況が理解し易い。(動画ファイル4.95MB)

TEPCO 2011.06.20 press release

広告

ロボットオペレータのブログ(その後)

アンカーマン・中村仁彦

前回の記事で紹介した「ロボットオペレータのブログ」は、7月5日の時点で原子力発電所での作業の内容に関わる記事が削除されていました。貴重な情報だったのでたいへん残念です。

原発事故の現場を管理する側から情報管理上の圧力が著者にあったとすればお気の毒です。ブログは、感情に振り回されず、落ち着いた言葉で、客観的で、主義や主張に偏らず、現場でしか分からない経験を情報として提供していました。技術者にとっても現場での機械やロボットの実態が分かる貴重な情報でした。

現場を管理する側の方へのお願いです。わが国全体からあるいは世界から注視され情報提供の責任を持っているにもかかわらず、原発事故に関する情報の透明性が確保されていない状況です。通常の職務上の守秘義務をもってひとくくりに締め付けるのではない対応をお願いします。

著者の方にお願いです。公開をはばかられるとしても是非「ロボットオペレータの記録」として残しておいてください。いつか時期がきて必要とされると思います。

twitter上で、roboticstaskforce での紹介があったので削除することになったのではないかという指摘もありました。インターネット上の特定の公開情報の価値を認める者が、その価値の故に意図的にその流布を止めようとすることは公開性の原理に反する行為である思います。

人には、情報の占有をパワーとみなし、パワーをもつことで優位に立とうとする深層心理があるのではないでしょうか。様々な情報に接する立場のグループの人たちが、秘密情報でない情報についてもグループの外に口を閉ざす傾向がある。今回のように公開性を明確に求められる状況においても、このような「美徳」が何十もの美徳のバリアになって情報の伝達を遅らせている。公開の意図的不作為は、目的はどうあれ行動として、この深層心理に屈服してしまうことではないでしょうか。


ロボットオペレータのブログ

情報提供:産業技術総合研究所 荒井裕彦氏

森山和道氏のブログに,福島第一原発でロボットの操作を行っているオペレータの方のブログが出ていました.原発での作業内容が具体的かつ詳細に述べられていて,実に興味深い内容です.

http://sh-blog.at.webry.info/


福島原発の放射能を理解する

カリフォルニア大学サンタバーバラ校のBen Monreal教授が2011年3月16日に行った公演のスライドを以下の方々が、教授の許可を得て日本語に翻訳したものが公開されています。放射能、放射性物質、放射線量、放射線被爆、メルトダウンについての分かり易い解説になっています。理研の以下のページからダウンロードできます。

http://ribf.riken.jp/~koji/jishin/

翻訳者のみなさん:
野尻美保子(高エネルギー加速器研究機構/東京大学IPMU)
久世正弘(東京工業大学理工学研究科)
前野昌弘(琉球大学理学部)
衛藤稔・石井貴昭・橋本幸士(理化学研究所仁科加速器研究センター)


オピニオン3部作のPDFはこちら

アンカーマン・中村仁彦

記事として投稿したオピニオン3部作のPDFを以下におきました。
印刷して読むにはこちらをダウンロード下さい。

0. タスクフォースの役割 2011.05.02

1. 中期的な原発災害対策に向けた指針 2011.06.18

2. 長期的な災害対策に向けた研究開発 2011.06.18


オピニオン:長期的な災害対策に向けた研究開発の取り組みについて(5)

中村仁彦・アンカーマン

(5)まとめ

安心・安全な社会の目標は災害や事故の起きにくい防災システムをつくることと、起きた場合の国民の苦痛と不安を最小にとどめる対災害システムを作ることにある。

対災害システムの開発には、これを実際に利用して日本全国の災害に備えるため自衛隊との連携が必要であり、先端科学技術の採用に伴う周到な訓練についても同時に行うべきである。このときに「防衛」と研究機関の歴史的な関係の精神を尊重しながらも、なお克服すべき課題もある。

一つの考えは、国が当初の設立を行い民間かNPOに運営を委託するかたちで「対災害システム高等研究所」のような独立研究機関を作ることである。独立研究機関は、大学でもなく完全な国の機関でもない性質を持つため、国のどの省庁の管轄下の組織であっても、また大学の研究者や学生であっても集うことができる。ここで大学等の研究機関の研究者が参加して先端技術を応用した対災害システムの研究開発を行うとともに、自衛隊や消防との連携を促し、先端技術を利用するための訓練も実施することができる。

対災害システムを完全に自由な市場原理だけで育てることは、わが国では困難である。フランスの例に習って、原子力発電を行う事業者や危険を伴う大規模な化学プラントもつ事業者がその規模に応じて災害に対する最先端設備とそれを使用する人員を自前で、あるいは共同で保有し、設備の維持管理と人員の訓練を日常的に行うよう法整備を行うべきである。このように市場原理の誘導に必要な多少のバイアスをかけることで、対災害システムを先端技術によって研究開発し、日常的に維持するための社会システムをもつことができる。

「対災害システム高等研究所」やそれを通じて開発される先端科学技術に基づく対災害システム、ならびにそれを使うべく訓練された優れた組織を持つことは、科学技術立国をめざすわが国の安心・安全な社会への取り組みとして、長期的に国民に支持されるに違いない。また、世界のどこかで必ず起きる大規模災害に際して、このような科学技術と訓練された組織をもつことは、わが国が科学技術と人的支援で国際貢献する名誉ある使命を担うことでもある。


オピニオン:長期的な災害対策に向けた研究開発の取り組みについて(4)

中村仁彦・アンカーマン

(4)民間の研究機関の設立

NASAの木星・土星探査機パイオニア、ボイジャー、火星探査機スピリッツ・オポチュニティ、土星探査機カッシーニ・ホイヘンスなどの研究開発と運営を行ってきているのはアメリカ合衆国が管轄し、カリフォルニア工科大学が運営する1943年に設立されたジェット推進研究所 (JPL)である。同大学のグッゲンハイム航空研究所のロケットプロジェクトが前身であり、アメリカ陸軍のロケットプロジェクトに関わった。

ロスアラモス国立研究所は1943年にマンハッタン計画に関わって設立され、現在ではナノテクノロジー、情報通信等を含む幅広い先端科学技術の研究所となっている。アメリカ合衆国エネルギー省の委託で、2005年まではカリフォルニア大学が、2006年からは同大学の他に複数の大学や民間会社も加わったLANS (Los Alamos National Security)という組織が運営を行っている。

リンカーン研究所は1951年にアメリカ合衆国国防総省によって設立されたマサチューセッツ工科大学 (MIT)の研究所である。空軍から打診が会った際に当時のMIT学長James KillianははじめにMITが研究分野を決定することを条件として、Project Charlesとしてスタートさせた。米国本土と北極圏のレーダ網の開発等を行った。現在では、小惑星の探索からホームランド・セキュリティまで広く研究を行っている。

ランド研究所は軍事戦略研究から民生公共政策・経済予測まで行うシンクタンクである。アメリカ空軍と、ダグラス・エアクラフト社が1946年に設立し、人工衛星の基礎研究を行っていた。」1948年に独立してNPOとなり、アメリカ合衆国政府の予算と民間の寄附で運営されている。人工知能、情報処理でも成果を上げてきた。

これらのように米国における軍事研究にかかわる研究機関の取り組み方には、合衆国が所有し大学が運営を行う形態や、合衆国と民間が共同で設立した研究所がNPOとして独立した形のものがある。

わが国においては「防衛」と研究機関の関係は、対災害システムの研究開発に限るとしても厳しい心の障壁があると言わざるを得ない。一つの考えは、民間のあるいはNPOの独立研究機関、例えば「対災害システム高等研究所」、として設立することではないだろうか。国が対災害システムの研究開発を目的に当初の設立を行い、民間かNPOに運営を委託する。運営費は国からの予算の他に、災害対策を立法化によって電力会社や大規模な化学プラント会社に義務づけ、その経費の一部をこの研究機関の運営に充てさせる。大学や国立研究所の研究者はこの機関との契約、あるいは兼業によって研究を実施する。防災対策のための研究開発に関しては事業者の他に自衛隊や消防との連携を密に行い、実施のために訓練も行うようにすべきである。「対災害システム高等研究所」は最先端の科学技術を応用した研究開発を行い、同時にこれに関わる人材を養成するために大学に隣接して設置することができるのが望ましい。