原子力関係の解説記事ダウンロードできます

原子力とロボットの足跡をたどる11編の古典

日本ロボット学会の会誌に掲載された原子力に関連するロボットプロジェクトの解説記事11編を読みませんか.

極限作業ロボットプロジェクト(1983-1990),原子力防災支援システム(2000-2001)の足跡をたどることができます.時間のない方は[2][8][9]をどうぞ.リンクが張られていますので論文名をクリックするだけでJournal@rchiveから全論文のPDFをダウンロードできます.合わせて記事「原子力防災ロボット1980-2000 (1) (2)」もお読み下さい.

  1. 平井成興,【巻頭言】「極限作業ロボットプロジェクト」特集について, Vol.9, No.5, p.61, 1991.
  2. 高野政晴,【展望】極限作業ロボットプロジェクト, Vol.9, No.5, p.74, 1991.
  3. 高瀬国克, 【解説】電子技術総合研究所における極限作業ロボットの研究開発成果, Vol.9, No.5, pp.79-82, 1991.
  4. 大山尚武,【解説】機械技術研究所における極限作業ロボットの研究成果, Vol.9, No.5, pp.83-87, 1991.
  5. 長谷川 勉・舘 暲・谷江和雄・築山俊史・大道武生・滝川 篁・平井成興, 【座談会「極限作業ロボットプロジェクト」を振り返って, Vol.9, No.5, pp.133-140, 1991.
  6. 中山良一,【解説】原子力用ロボットの動向, Vol.11, No.1, pp.62-66, 1993.
  7. 木村元比古・二宮 進・岡野秀晴,【解説】原子力用ロボット, Vol.13, No.6, pp.50-53, 1995.
  8. 濱田彰一・間野隆久,【解説】欧米における原子力防災ロボットの調査報告, Vol.19, No.6, pp.2-8, 2001.
  9. 間野隆久・濱田彰一【事例紹介】原子力防災支援システムの開発, Vol.19, No.6, pp.38-45, 2001.
  10. 小林忠義・宮島和俊・柳原 敏,【事例紹介】原研における事故対応ロボットの開発(その1)情報遠隔収集ロボットの開発, Vol.19, No.6, pp.30-33, 2001.
  11. 柴沼 清,【事例紹介】原研における事故対応ロボットの開発(その2)耐環境型ロボットの開発, Vol.19, No.6, pp.34-37, 2001.
広告

原子力防災ロボット1980-2000(2)

広瀬茂男教授(東工大)「大衆工学としてのロボット」日本ロボット学会誌,Vol. 21 No. 2, pp.138~140, 2003 より抜粋。

ロボットは作れば動き出すSF 漫画のような夢の機械ではない.また,現実的な原子炉関連事故のような極限環境で作動できるロボットシステムがそんなに簡単に開発できるものでもない.着 実に改良を重ね,同時にそれを操作できるオペレータも育成しながら,少しずつ実用性を高めていかなければならない「マシン」の一種である.作ってみて性能 が十分でなければ,その知見を引き継ぎながら開発を続け,機能が不完全でも事故が起きたら実際に出動して働かせられるように備えるべきである.そうでなけ れば,膨大な税金を使った意味がない.ドイツにはKHG,フランスにはグループアントラなどの原子力防災機関が常に装備を固め,要員の訓練を行っているの に日本ではなぜもっと真剣にそのような体制を取ろうとしないのだろうか.また結果的にお蔵入りするとしても,突貫工事で開発させておいてお蔵入りさせるな ら,少なくとももっと時間をかけてじっくりと開発してもらい,より完成度の高いものを作ってもらうべきではなかったのだろうか.単年度予算だから年度内に 予算は消化しなければならないとか,このような施設に予算を使いたがらない電力業界の抵抗などもあったのかもしれないが,この不景気の最中,数十億円の税 金を使うのであれば,それを有効活用する手立てはなかったのだろうか.日本が誇る優秀な現場のエンジニアがいくらがんばっても,このような硬直化した科学 技術行政システムの中で技術開発が続けられる限り,日本のロボットはいつまでも夢見るロボットにとどまるであろう.なお,この件に関しては,現在NPOの 「国際レスキューシステム研究機構」と,神奈川県,日本鋼管などが共同して対処法を模索中である.当然著しく困難な問題点が残されているが,なんとか日本 の今後のために利用できるようにしていくつもりである.


原子力防災ロボット1980-2000(1)

原発事故とロボットプロジェクト

東京大学教授 中村仁彦

原子力発電所に関わる事故の歴史では、次の3つのものが重要なものである。

1979年3月28日 スリーマイル島原子力発電所事故 (wikipedia)
1986年4月26日 チェルノブイリ原子力発電所事故 (wikipedia)
1999年9月30日 東海村JCO臨界事故 (wikipedia)

原子力施設の防災支援を目的としてこれまでに日本で実施された2つのロボットプロジェクトにはは以下のものがある。

1983-1990 極限作業ロボットプロジェクト
2000-2001 原子力防災支援システム

スリーマイル島原発の事故を受けて、「極限作業ロボットプロジェクト」が企画されたと考えるべきであろう。その8年間のプロジェクトに期間中に、チェルノブイリ原発事故が起こったことはプロジェクトに関わっていたものに緊張感を生んだ。また、東海村JCO臨界事故を受けて「原子力防災支援システム」が急遽実施され、1年間で実証までこぎ付けたことは事故の衝撃の大きさを表している。

「極限作業ロボットプロジェクト」は”ロボットを総合的なシステムとして捉え、その実現に必要な要素技術を研究開発し、それらの成果を統合してある程度完備したロボットを実現しようとする試み”(文献1)として立ち上がった。プロジェクトには18社、2法人、2国立研究機関が参加し約200億円の研究費が充てられ(文献2)、次のような開発が行われた。
(1)原子力発電施設作業ロボット(原子力ロボット)
(2)石油生産支援ロボット(海洋ロボット)
(3)生産施設防災ロボット(防災ロボット)
文献2では、”TMIやチェルノブイリのような事故が起こる前に(起こってはならないが)実用ロボットを開発しておく必要があろう”として、さらに実用化に向けた取り組みが必要であることを指摘している。

「原子力防災支援システム」では(財)製造科学技術センターが国の補助を受けて2000年に開発を開始した。開発推進委員会を設置し、海外調査、ワーキンググループ活動などを実施し、開発目標を設定した。担当企業は公募され、1 年間で設計・製作を行い、翌年2001年3月22-23日に実証試験を行った(文献3,4)。文献3は、”東海村の事例では、終息処置を行うのにロボットを使おうといった動きもあったようであるが、実際には使われなかった。やはり緊急事態では、普段からそれに備えてトレーニングされた原子力防災専門家でなければ対応は難しいということであろう。”という指摘で始まっている。そして、”このシステムは24時間365日、何時でもどこへでも出動できる体制で整備をしておくことが重要である。ロボットも一般機械製品、電気製品と同じであり、必ずメンテナンスを行う必要がある。これを怠れば、「いざ」というとき使えない。さらに、今後ロボット技術高度化も進んでいくことからロボットの改善・改良も必要となる。また、ロボットの操作も常に練習しておかなければ技量を保つことは難しい。今回、ロボットのハードのベースは完成したが、引き続きこれをうまく活用する運営・体制などのソフト面での整備を早急に進めることが重要である。”と結んでいる。

[1] 平井成興,「極限作業ロボットプロジェクト」特集について, Vol.9, No.5, p.61, 1991.
[2] 高野政晴,  極限作業ロボットプロジェクト,  Vol.9, No.5, p.74, 1991.
[3] 間野隆久・濱田彰一, 原子力防災支援システムの開発, Vol.19, No.6, pp.38-45, 2001.
[4] 濱田彰一・間野隆久, 欧米における原子力防災ロボットの調査報告, Vol.19, No.6, pp.2-8, 2001.
[5] 財団法人製造科学技術センター, 平成11 年度原子力防災支援システム開発補助事業成果報告書, 2001年8月.