オピニオン:長期的な災害対策に向けた研究開発の取り組みについて(5)

中村仁彦・アンカーマン

(5)まとめ

安心・安全な社会の目標は災害や事故の起きにくい防災システムをつくることと、起きた場合の国民の苦痛と不安を最小にとどめる対災害システムを作ることにある。

対災害システムの開発には、これを実際に利用して日本全国の災害に備えるため自衛隊との連携が必要であり、先端科学技術の採用に伴う周到な訓練についても同時に行うべきである。このときに「防衛」と研究機関の歴史的な関係の精神を尊重しながらも、なお克服すべき課題もある。

一つの考えは、国が当初の設立を行い民間かNPOに運営を委託するかたちで「対災害システム高等研究所」のような独立研究機関を作ることである。独立研究機関は、大学でもなく完全な国の機関でもない性質を持つため、国のどの省庁の管轄下の組織であっても、また大学の研究者や学生であっても集うことができる。ここで大学等の研究機関の研究者が参加して先端技術を応用した対災害システムの研究開発を行うとともに、自衛隊や消防との連携を促し、先端技術を利用するための訓練も実施することができる。

対災害システムを完全に自由な市場原理だけで育てることは、わが国では困難である。フランスの例に習って、原子力発電を行う事業者や危険を伴う大規模な化学プラントもつ事業者がその規模に応じて災害に対する最先端設備とそれを使用する人員を自前で、あるいは共同で保有し、設備の維持管理と人員の訓練を日常的に行うよう法整備を行うべきである。このように市場原理の誘導に必要な多少のバイアスをかけることで、対災害システムを先端技術によって研究開発し、日常的に維持するための社会システムをもつことができる。

「対災害システム高等研究所」やそれを通じて開発される先端科学技術に基づく対災害システム、ならびにそれを使うべく訓練された優れた組織を持つことは、科学技術立国をめざすわが国の安心・安全な社会への取り組みとして、長期的に国民に支持されるに違いない。また、世界のどこかで必ず起きる大規模災害に際して、このような科学技術と訓練された組織をもつことは、わが国が科学技術と人的支援で国際貢献する名誉ある使命を担うことでもある。



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