オピニオン:長期的な災害対策に向けた研究開発の取り組みについて(2)

中村仁彦・アンカーマン

(2)対災害システムと「防衛」

大規模な自然災害が起きた際の救助や救援の活動において、自衛隊の役割は大きい。自治体の境界を越えて、短時間で大規模な活動を実施できる組織は他にはない。自治体における消防や警察の役割は主に、日常の防災活動や対災害活動にあるが、大規模災害時の自衛隊の役割を兼ねることはできない。自衛隊の保有する特殊設備も大規模災害時の救助や救援に必要になる。大災害に対する科学技術システムを置くには、自治体を超えた国の機関に置いて災害の地域に応じて大規模に機動的に活動できることが望ましい。今後も自衛隊に対する対災害活動の役割が縮小されることはないと考えられる。

対災害のための科学技術を開発し災害に備えるためには、同時にこれを運用する組織との連携と、そこでの継続的な訓練が必要である。わが国の研究機関と自衛隊との間には、このような連携を困難にしている問題がある。自衛隊の設備に関しては、防衛省技術研究本部が「陸上自衛隊・海上自衛隊又は航空自衛隊が使用する車両・船舶・航空機・誘導武器及び統合運用に資する各種装備品から防護服に至る広い分野の研究開発」を行っている。大学が自衛隊の設備に関する研究開発に関わっている例は、おそらく現状では皆無である。

わが国の研究機関、とくに大学では「防衛」に関わる研究、すなわち軍事研究については厳しい自主規制が存在している。例えば、東京大学では1959 年に当時の茅誠司総長が「研究者が良識と良心、自主性のもとに平和研究を行うべき」と東京大学新聞において発言し、その後の東京大学の研究の指針になっている。このような軍事研究への姿勢はわが国のほとんど全ての大学において同様である。学術と平和を両立させようとする先学の決意は、今後も誇りを持って堅持されるべきであると信じている。しかしながら、大学において対災害のための科学技術を研究することになんらかの障壁があるとしたら、その問題に対する対応を考える必要がある。



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