オピニオン:中期的な原発対策に向けた指針と研究開発の公開性について(3)

中村仁彦・アンカーマン

(4)テクノ・ソーシャルメディア

公開性をもつ研究開発システムとは、専門家、技術者の技術開発を支援するソーシャルメディアの形を取るだろう。例えば以下のようになる。

(4−1)公開技術開発に参加できる専門家、技術者、学生はその専門領域、専門知識、開発経験などを提供して登録する。FacebookやLinkedinなどのソーシャルメディアに近い機能である。

(4−2)プロジェクトリーダ(PL)は、一つの開発テーマについてその概要を説明し参加希望者を募集する。参加希望者は参加可能な時間数とともに応募する。PLは参加希望者の個人の登録情報から参加者候補を決定し参加を招待する。PLはさらに詳しい条件等を説明し、参加希望者が同意してプロジェクトが立ち上がる。プロジェクトが立ち上がったら、PLは技術開発についての課題や状況などの詳細情報を参加者に提供し、プロジェクトを進める。

(4−3)プロジェクト参加者はグループウェアを通じて、スケジュール管理、テレビ会議、文書作成、CAD図面の作成、報告書、ソフトウェア開発などを行う。ちょうど企業での技術者の在宅勤務環境に相当する環境である。実際顔を合わせてのミーティングや実験室や現場に集まっての実験などの機会も必要になる。

(4−4)これらの活動はグループウェア上でアーカイブが取られている。研究開発の内容、進捗、成果などについては知財等の問題にならない範囲でできるだけ公開する。この公開をできるだけ広く、できるだけオンラインに近い状況で行うことを目指す。

(4−5)特許、著作物等の扱いについては法律に基づいて行う。PLは予め参加者本人と参加者の所属機関、企業などのあいだでNDAを含めて、契約条件などを明らかにして提示する。人材養成の観点から、プロジェクトには専門性が高くない学生にもある程度の人数の参加を許すようにすべきである。

上述の例は、専門家、技術者を集めてあたかも一企業の中で社内プロジェクトを実施するかような緊密な形態である。この他に、中心になる企業あるいは企業コンソーシアムがプロジェクトを実施し、外部の専門家、技術者がコンサルタントのようにアドバイス、技術支援を行う緩い形態も可能もある。いずれの場合にも、技術開発システムをソーシャルメディアの形にしたもので対応できるだろう。公開性をもつ研究開発システムは、見方を変えればオンラインの電子書籍の執筆、編集、出版に近いともいえる。公開される情報をまとめたものは原発の廃炉プロジェクトの開発履歴を後世に残す最適な報告書となる。人材育成のための教材としても優れた教材を提供するだろう。

テクノ・ソーシャルメディアは原発の廃炉に向けた活動だけでなく、一般に広く開放されだれもが自由に使えるようにするべきである。第三の指針の「したたかな目標」にねらいを定めるためである。テクノ・ソーシャルメディアを使うことで、一般の社会的技術課題について、専門家、技術者、企業、起業家、投資家がPLとしてプロジェクトを立て、参加することで広く最適な人材を集めた技術開発を行い、スピード感のある産業化を測るテクノ・ソーシャルネットワークが生まれる。

テクノ・ソーシャルネットワークは長期的には技術者の雇用形態を変化させるかもしれない。ソフトウェアの世界では特定の事業内容によってキャリアが高まるというより、ソルーションの企画と実装方法によってキャリアが高まる特徴がある。つまり実装方法は共通性があり異なる事業間のソフトウェア技術者のキャリアの流動性は高い。有能なソフトウェア技術者は、シリコンバレーで次々と新たな事業に関わりキャリアを高め、事業を興したりしている。テクノ・ソーシャルネットワークはソフトウェア以外の分野の有能な技術者にも流動的にキャリアを積む、高度に専門的なフリーランスエンジニアへの道を開くことになる。



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