災害対策ロボット技術解説(7)

災害対策用ロボットの維持と継続性に関する課題

東京大学 淺間 一教授 中村仁彦教授

これまでに,原子力用ロボットとして,以下のような国家プロジェクトが実施された.

  • 極限作業用ロボット(通産省)
  • 原子力プラント点検ロボット(通産省)
  • 原子力基盤技術開発(科学技術庁)
  • JCO 対策原子力防災ロボット(通産省,科学技術庁,日本原子力研究所,原子力安全技術センター,原子力プラントメーカ)

これらの他に、原子力プラントの各メーカにおいても様々なメンテナンスロボットが開発されている.これまでに開発された原子力用ロボットの技術については,残念ながら今回の災害に対して即導入可能なロボットシステムは存在しない.その主な理由は以下のとおりである.

  1. 実際に使用されている原子力用ロボットシステムの多くは,メンテナンス用の専用機であり,災害対策の様々な状況に対応できる汎用的機能をもっていない.
  2. 要素技術としては有効であるが,実用機としてシステム化されていなものがある.
  3. 実用を目指して開発された汎用的機能を有するロボットの開発はなされたが,維持・運用が行われなかったために,すでに廃棄されているものがある.

災害対策用ロボットに関しても開発のための初期投資が行われた.災害対策用ロボット市場は,国や自治体,電力会社などに限定されおり,開発後に,国や自治体,電力会社による投資がなければ,災害対策用ロボットやその技術を維持することは困難である.過去の災害対策用ロボットについても,開発後の維持・運用に関する予算措置によって利用可能な状態に維持する努力がなされてこなかった.

日本の原子力政策は,日本の原発には事故は絶対に起きないという原子力技術に対する絶対的な信頼の上に立脚してきた.絶対に起きないのだから事故に対応するシステムは不要であるという論理が展開された結果,事故に備えた原子力用のロボット技術の必要性は否定され,プロトタイプ開発後の実用化開発は行われず,開発されたロボット技術の保守さえ行うことができなかった.

一旦災害が発生した時の被害の甚大さを考えれば,開発されたロボットシステムを訓練などで利用しながら,維持・管理・改良などを継続的に行う体制を取るべきである.国や自治体,電力会社は安全性と危険性の評価を科学的・技術的に行い,それを広く国民や住民に開示することで,このような活動に長期的な投資が必要であることの国民的理解を得る必要があった.「絶対に起きてはならない」という目標を「絶対に起きないのだから」という前提にすることが論理の誤謬であることに,科学者や技術者は容易に気付いたはずである.これが行政的,経営的論理として成立した問題を社会科学的に検証しなければならない.また,科学者や技術者がこの論理の成立に抗することができなかった問題の検証も必要である.



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